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【書評】乙女の絵画案内 総評

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遅ればせながら乙女の絵画案内読みました。先に日本再発見*1読んじゃったので物語が前後しちゃったのですが。本書内で「私にとって西洋絵画は日本絵画に出会うための窓」という表記(p190)があって、順序を守って読めば良かったなぁと思いました。

読んだ感想。僕は美術については残念ながら全く詳しく無いので、こういう楽しみ方をすれば良いのかぁと丸呑みしています。詳しい人が読んだらどうなんだろう。そういう意味で「絵画案内」としてとても良い内容だと思いました。僕が見た事のある絵も何点か紹介されていましたが、その全て!に対して、新しい視点を教えてもらいました。例えばクリムトの接吻は好きな絵でしたが、あの金の使い方が琳派の影響を受けているという説がある事は初めて知りました。こういう、点と点が繋がって輪郭を浮かび上がらせていく流れは、何かを勉強することの根本的な楽しさだと思います。取りつく島のない無限ではなく、有限だからこそ豊かな広がりがある事を知るのは、どんな学問であっても、気持ちの良い体験だと思います。

また、あやちょ信者の僕からしてみると、和田さん本人を知る本としても、とても興味深かったです。

例えば。全体の印象として、「本人の言葉で語られてる」てのがやっぱり印象的でした。大学で学んだ知識や桜井さんはじめ様々な人から得た知識を、自分のものとしているんだなぁと。引用すると、

描く人と観る人のあいだに、こういうふうに描くと美人画になるという”お約束”ができていると、それがかわいく見えちゃうんです。(p194)

というくだりがあるのですが、これはサブカル論壇でいう記号論の話で、和田さん自身は漫画やアニメには興味ないはずなので、これはきっと桜井さんの入れ知恵だろうなと思います。"お約束"の引用符は桜井さんの言葉なのかなと。桜井さんが「記号」という言い方ではなく「お約束」という言葉で和田さんに伝えていたのだなぁと感じられて、良い師弟関係だなと思うと同時に、そうやって仕入れた知識から、自分が咀嚼できた部分を「自分の知見でござい」という文章で表現できる和田さんの、フロントマンとしての強さも素晴らしいと思いました。スティーブジョブズはしばしば周りの人のアイディアをさも自分のアイディアのように語ったと聞きますが、それに近い感じというか。それは傲慢さとかじゃなくて、前だけ見て突き進む人の特徴なんだろうなと思います。フロントマンとして、実に正しい。頼もしい。

もう一つ、フロントマン和田彩花がモロに出すぎてて思わず笑っちゃったところが、フェルメールに自分を描いてもらうならと妄想するくだりです。そこで描写されるイメージがあまりに具体的で美しくて、なのに誇張や陶酔といった自意識をかけらも感じさせないあっさり具合で、ここまでの客観性を自分に対して向けられるというのは、見られる事が当たり前な生き方をしてきた人ならではだろうなと思いました。僕の日常に、フェルメールに描いて欲しい一瞬などない!w 強いて言うなら新井英樹に描いて欲しいかな... もしくはキングゴンタ... ゴクリ。職業としてアイドルをやっているという以前、存在そのものが耳目を集める人間だって事を、自然に受け入れている様が感じられて、ますます信仰を深めました。これが和田様の世界...

 

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流れてきたメッセージカードで一番好きなやつ #和田彩花

印象派と呼ばれる人たちが「美術界の保守主義に対抗した闘う画家たち(P50)」だという事もこの本を読んで初めて知った事なのですが、和田さん本人の言動が最近特に「アイドル界の保守主義に対抗」する様相を見せているのも、関連性が感じられて良いです。上に貼った画像は、2016/5月頭にあった、メッセージお渡し会という素敵イベントのレポとして流れてきた画像です。このほか、「"普通"について話したい!」というものも見かけました。和田さんの中で「普通」というものがテーマになっているんだろうなぁと。2014年3月に出版された本だから、およそ3年ほど前にはすでに、こういうイメージを持っていたんだなぁ。ほんとブレない。忠誠。

「美術の見方を学ぶ本」としても「あやちょを知る本」としてもめちゃくちゃ面白いので、日本再発見とともに何度も読む本になったと思います。最近の和田さん周りは面白いテキストだらけで、はやく咀嚼しないと大変。過去ブログも読まないとだし。絵画に関する事と和田さんの人間性が読めて、所々で椅子に座ってくるくる回るみたいな激キャワ描写も挟まれるのだからなんてお得な一冊だろうかと。

ということで、以下気になったところを引用メモ。どこも良いのだけど、とりあえず思いつくところをいくつか。

パリという、いわば芸術家にとっての約束の地(p175)

こういう言い回しをするのが珍しいなと思った。「友よ」の歌詞に繋がったりしたのかなー 直接的にじゃないにせよ、連想として。雨子さんそういうリサーチするのかな。

人も歴史も繋がっているんだなあ、と感動します。そして絵画は、その証拠写真のように描かれていくのだと思うのです。(p186)

証拠写真!妄想の裏付け。あぁーー良い。ヲタもまた「このあやちょとまろの表情がっ!これは絶対抱いてる!!」とかやってる訳でね... この本ももちろんだし、ブログなんかも証拠写真の山です。楽しいです。ありがとうございます。

「あやちょ(私の呼び名です)から光が出ていて、キラキラしている」といってくださるファンの方がいらっしゃいます。(p110)

以前もどこかで言ってたなーこれ。言ったヲタは光栄であろう... 握手会でそんな話ができるのすごい。私から光が...と書かずに、補足説明付けてまで発言の引用という形式を採用したあやちょの、原典に忠実な感じとかキャラクターとしての自分への視点の爽やかさが素晴らしい。

"本物の絵画"ってなんだろう?(p140)

ミュシャの印刷物としての絵画、商業としての絵画に対して持っていた先入観と、実際相対したときの素直な感想。「インテリとは自分の意見を翻すことができる人」みたいなこと言ったのは養老孟司だったかしら?そういう姿勢を感じた。日本再発見では版画としての浮世絵に対して、「消費されるものだから良い!」ということも言っていて、それがアイドルとしての自分に重なるような表記もあって、知識が積み重なり、やがて思考や思想に定着していく様が感じられてゾクゾクする。

あまりに有名すぎる絵って、なんだか全部わかっている気がしてしまうことってありませんか?(p60)

あります。サイゼリアでおなじみのボッティチェリ<春>に対するハっとする指摘。普通ってなんだ?と考えるときには絶対必要な視点。僕も(僕の中で)あまりに有名すぎる和田さんに対して、常に新鮮な視点をキープできるよう心がけようと思います。